本日は「水」について考えてみます。今、政界で問題になっている水とは少し違いますが。

私たちの暮らしや生活環境のなかで、ここ50年間で失われたものは数多くあります。その1つとして、栄養成分とりわけミネラルを多く含んでいた水について考えてみましょう。

水は、言うまでもなく生物にとって貴重な存在です。私たちの身体の6〜7割が水分ですし、海岸で穏やかなときの波を見ていると時間の経過を忘れてしまうのも、海が故郷のせいかもしれません。

私たちが、水の恩恵を受けるには空から降ってくる雨がまずスタート。わが国は、圧倒的な山岳地帯を有しています。したがって、降ってきた雨は山に降り注ぎ、山の木々を通して木の葉の堆積した土へ浸透し地中に入っていきます。また、渓谷に直接入りこんだ雨水は、急流となって岩石にぶつかりながら、次第に川幅を広げて里へ到着します。この過程で、水は地中の化石層や岩、土と接触します。その過程で水は豊富なミネラルを含み、湧水となったり用水となって利用されます。

農業の世界でも、50年前のことを思い出せば、土作りが当たり前のこととして行われて今した。2代先のことを考えての土作りでした。土の中にいる豊かなな生物(微生物など)によって、多くのミネラル分が野菜に吸収されていました。そして、旬のものが当たり前の時代でもありました。

今日、山や河は開発されたことで、雨水は岩にぶつかり合って里へ降りてくることがなくなり、効率を求めた農業の普及によって土の中の生物は減少しています。そのことによって何が変わったでしょうか。

日本食品標準成分表でほうれん草の栄養成分を見ると、50年前100g中に150rあったビタミンCは、今では35rにまで減っています。かつてと同じ栄養を採るには、5倍近い量を必要とします。自然界から得られていたミネラルが、今は激減しているからです。

開発されたものを回復するには、時間とお金がかかります。土作りの大切さが叫ばれ、広がりをみせています。旬も話題に上ります。しかし、すぐに有機農業に切り替わるわけではありません。50年かけて失ったものですから、50年先になんとか取り戻すくらいの時間が必要となるのでしょう。

私たちの周辺の水のミネラルが減少している現状のなかで、塩素を除去するということで普及している浄水機。これはこれで必要でしょうが、ミネラルのことを考えると・・・。塩素ばかりかミネラルも減ってしまうからです。

珊瑚や貝化石を肥料にして、ミネラルの補給を有機農業では使用しています。農業の世界では、ミネラルは微量要素というかたちで普及しています。建造物でも、貝の粉末が化学物質を吸収したり、殺菌効果があるとして注目されています。私のレストランでは、
黒松内、瀬棚一帯で産出する貝化石のもつアルカリ性を利用した水のサービスをはじめました。自然界から栄養分が十分得られるときまで、食を通して考えていくしかないのでしょう。
(2007年3月20日)